† 自筆証書遺言~自筆証書遺言は無効になりやすい?

¶ 遺言を秘密にできることが一番の長所。

 公証人に依頼せず、自分ひとりで作成する遺言を、自筆証書遺言といいます。

自筆証書遺言の利点は、自分ひとりで作成できるために、遺言したこともその内容も秘密にできることです。

 ただし、個人でつくるために不満のある場合が多く、とくに病気中の作成は手が震えるなどで筆跡が変わることもあって、往々にして遺言の効力について争いが生じやすいという欠点があります。

 また、確かな人に預けないと、紛失したり、隠匿や改変、破棄されるという危険性もあります。ですから、保管場所は確実に保存することができて、亡くなったあとで相続人に発見されやすい銀行の貸金庫を利用するか、遺言の執行者に保管を依頼するとよいでしょう。

 

¶ 自筆証書遺言が遺言として認められる条件は?

自筆証書遺言が有効であるためには、以下の点に注意をして作成する必要があります。

 

①全文を自筆にする。

 遺言の内容の全文と日付、および氏名をすべて自筆で書きます。タイプライターやワープロ、コンピューターなどによる作成や、代筆してもらったものは認められません。

 

②年月日を明記する。

 「平成○年○月○日」と、年月日が特定できる書き方にします。年月日でなく、「還暦の日」、「○歳の誕生日」、「平成○年の文化の日」などは年月日が特定できるので有効ですが、「平成○年○月吉日」や、「平成○年○月」などは無効になってしまいます。

 なお、遺言が2通出てきたときには、もっとも新しい日付のものが有効になります。

 

③署名と押印

 署名は、本人が特定できるものなら、ペンネームでも通称でも有効です。押印は、実印、認め印どちらでもよく、拇印でも有効ですが、できれば実印を押印するほうが改変される可能性も少なくなります。

 

④加除訂正には訂正印が必要

 偽造・変造を防ぐために、加除訂正の方法は一般文書よりも厳格になっています。忘れてはならないのは、訂正印です。署名の下に押印した印鑑と同じものを使って押印します。

 

⑤様式、用具などは自由

 縦書き、横書き、用紙の種類と大きさ、筆記用具などは、すべて自由です。筆記用具は鉛筆でもかまいませんが、改変されやすいので、できれば長期保存にたえる筆やボールペンなどで書くほうがよいでしょう。

 

⑥封入、封印は自由

 封筒に入れるかどうか、封印するかどうかも自由です。ただし、自筆証書遺言は遺言者の死後、家庭裁判所に届け出て検認手続きをしてもらうことが必要ですから、封入、封印するほうが安心です。