† 公正証書遺言~公正証書遺言はも最も確実な遺言

¶ 無効や紛失、改ざん、盗聴などのおそれが少ない。

 公正証書遺言は、遺言者の希望する内容を、元裁判官や元検事、弁護士などの、法務大臣から任命された公証人が遺言書として作成するので、法的に無効となることはありません。また、原本が公証人の手元に20年間保管される(正本は遺言者本人が保管)ので、紛失や改ざん、盗難などの心配がありません。

 

 また、家庭裁判所の検認を受ける必要もないので、この公正証書遺言だけで、相続登記などの遺言の内容を実現する手続きをすることができます。

 したがって公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言に比べ、普通遺言方式のなかで一番安全で確実な遺言といえるのです。

 ただし、手続きが面倒なこと、公証人への依頼費用もかかるということ、そして遺言の存在と内容を立ち会った証人たちに知られてしまうという欠点もあります。

 

 

¶ 公証役場に出向けない場合は、出張してもらうこともできる。

 公証証書遺言の作成には、以下のような手順で進みます。

 

①遺言者がふたり以上の証人と公証役場に出向きます。

 遺言者が重病で、公証役場に出向けない場合は、自宅や病院などに公証人に出張してもらうこともできます。

 

②証人の立会いのもと、公証人に遺言者本人が遺言の趣旨を口頭(手話通訳や筆談でも可)で述べます。そして、公証人がこれを筆記して作成します。

 

③筆記がすむと、公証人はその内容を遺言者と証人に読み聞かせます。

 

④遺言者と証人は、内容に間違いがないことを確認したあとで、各自が遺言書に署名し、本人確認手段として印鑑証明書を添付した実印で押印(証人は弁護士や行政書士がなることも多く、公証人と面識がある場合には認め印でも可能です。)します。

 また、遺言者が口がきけない、耳が聞こえないなどの場合には、筆談や通訳の人が代わりに話したり聞いたりしたうえで、公証人がその理由を付記して署名に代えることができます。

 

⑤最後に、公証人がその公正証書遺言が法律の方式にしたがって作成されたものである旨を付記し、署名、押印します。

 遺言者本人の意思の表明が不明瞭な状態のときは、公正証書遺言は無効となってしまうので注意が必要です。

 

 

¶ 公正証書遺言の原本は、公証役場に保存されるので安心。

 こうして、公証人により作成された公正証書遺言には、原本、正本、謄本の3通があります。

原本は、公証役場に無料で保管され、正本と謄本は遺言者本人に渡されます。

万一遺言者が正本を紛失しても、再交付を受けることができるので安心です。

 なお、公正証書遺言は、日本公証人連合会の遺言検索システムに登録されているので、全国のどこの公証人役場からでも照会ができます。

 ただし、遺言者の生存中は本人以外閲覧できません。死亡後は、利害関係のある人に限り、閲覧や謄本の交付が請求できます。

 

 

¶ 不適格な証人を立てると、その遺言は無効となる。

 公正証書遺言の証人になれるのは、利害関係のない成人に限られます。したがって、以下に該当する人は、証人になることができません。

①未成年

②遺言者の推定相続人

③受遺者

④②及び③の配偶者、直系尊属

⑤被後見人、被保佐人

 不適格な証人を立てていた場合は、遺言が無効になってしまうので、注意が必要です。