† 相続財産の範囲と課税・非課税財産 ~遺産にはどのようなものがあるか?
¶ 遺産分割の対象となる財産には、譲渡が禁止されているものもある。
相続人は、被相続人の財産に属したいっさいの権利および義務を受けます。
例えば、現金や預貯金、土地・家屋、家財、自動車、貴金属、書画骨董などはもちろんのこと、借地権や借家権、特許権、実用新案権、株主権(合資会社や合名会社などでは社員権)、あるいは一部のゴルフ会員権なども相続できます。
このほか、重要文化財や漁協権、鉱業権、著作権など、それに、譲渡禁止特約付きの売買代金や買い戻し特約付きの不動産などの譲渡が禁止されているものも相続できます。
¶ 対象となるかどうか、あいまいな財産も。
生命保険金は、被相続人が自分で保険料を負担して、自分自分に保険をかけていた場合は、だれが保険金の受取人になっているいるかで、相続財産となるかどうかが決まります。
受取人が自分自身または単に相続人としてし、受取人が「妻」「長男」と個別に指定してあった場合や保険金の受取人自身が保険料を負担して被相続人に保険をかけていた場合は、受取人固有の財産として遺産分割の対象となりません。
¶ 一身専属的な権利義務は相続することはできない。
亡くなった人が有していた権利と義務のなかには、相続できないものもあります。また、遺産を相続するに際して、遺産分割の対象とはならないものもあります。
例えば親権や扶養料請求権・扶養義務、国民年金受給権、代理人としての地位、労務を提供する義務、支払う前に亡くなった人だけしか行使できない一身専属的な権利義務なので、相続はできません。ただし、扶養料については、支払ってもらっていない分があれば、その未受領分については相続に対象となります。
また、使用貸借関係や身元保証など、強い信頼関係にもとづいた権利義務も相続できません。ただし、身元保証については、すでに身元保証人である被相続人が生前中に具体的な損害賠償義務を負っていたときには、一般の金銭債務(未払金)と同じことになるので、その賠償義務は相続されることになります。
合名会社の社員、合資会社の無限責任社員の地位も、死亡により退社となるので、相続できません。
墓地や墓石、仏壇、祭具、系譜(系図など)などは、先祖をまつるための祭祀財産として遺産分割の対象となる相続財産には含められません。複数の相続人の間で分割してしまったは、祭事の際に不便だからです。民法では、これらの祭祀財産は、慣習に従って先祖の祭祀を主宰する人が受け継ぐように定めています。祭祀財産の財産価値の多少も問われません。
なお、受け継いだ人がその祭祀財産を売却したとしても、ほかの相続人がその売却代金を分けるように請求することはできません。
¶ 相続税の課税対象となる財産、課税対象とならない財産は。
相続税は、相続で取得した本来の相続財産のほかに、遺言による贈与(遺贈)や「私が死んだらあげる」というように死亡を条件とした死因贈与により取得した財産に対しても、原則として課税されます。
そのほか、生命保険金や個人年金、死亡退職金などは、本来は相続や遺贈で取得したものではありませんが、相続した財産とみなされて課税される場合があります。これをみなし相続財産といいます。
また、相続開始(死亡時)前3年以内に被相続人から贈与された財産も、課税財産です。
ただし、相続により取得した財産にはすべてのものに相続税が課税されるのかというと、そうではありません。なかには、課税されない財産もあります。
非課税財産は、その性質上、国民感情や社会政策的な面からみて、相続税の課税対象とするには不適切な財産だということで、相続税が課税されないことになっているものです。
これらを相続税の非課税財産といい、墓所、祭具などや、香典や花輪代、一定額までの弔慰金、国などに寄附した財産、公共事業用財産、心身障害者扶養共済制度にもとづく給付金(年金)などがこれにあたります。
また、相続人が取得した死亡保険金や生命保険金などのうち、500万円に法定相続人の数をかけた金額までは非課税となっています。これを、死亡退職金控除、生命保険金控除といいます。